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午後8時
 あと二つのお寺を回ったが、状況は同じで身元不明の遺体もあり無理と判断し彼のアパートに行くと、息子たちがいて、畳の遺体を指差して「秀也君や。」と言う。 先ほど奥さんや私たちが彼の顔を見たが今から考えると、なんとか生きてほしい願望と圧死とで違う顔に見えたらしい。
 私は吉川さんが意外に冷静なので安心した。
 息子たちがワゴン車に乗ってきているので家に運ぼうとしていると、役所の方らしい人が「検視をしなければならないので、高鷲小学校に運んで、 そして遺体は明日とりにきてほしい。」と言うので、学校へ行くと学校は真っ暗で、引っ切り無しに救急車が遺体を運び入れている。
 地震で階段が浮き上がったところを登って廊下に入り懐中電灯で教室を覗くと全ての机に、机ひとつに遺体ひとつがのっている。
 そして足になにかがあったて見ると壁を隔てて暗い中に着の身着のままで非難している人達がいてびっくりすると同時に胸が痛んだ。
 どうみても、食事が出きる状態ではない。
 偶然、検視官が来て検視をしていただいた。 死因は圧死で即死だそうだ。 検視が終わったので今連れて帰る許可をもらった。
 検視官が吉川さんに書類を渡し記入してと言うが書けない。 では確認のために住所、氏名、電話番号を尋ねるが全く出てこない。 
 家内が代わりに答えたが、冷静ではなく、あまりのショックのため、全く思考能力が無くなっていた。
午後11時
 吉川さんの家に秀也君を運び入れた。 そして知り合いの僧侶に葬儀屋さんを頼んだが来れる状態ではないらしい。 しかも棺桶がなく小さいのをひとつ確保してくれた。 しかも単独の葬儀はこれが最後で後は合同になるそうだ。 
 僕たちは家に帰ったが家内は吉川さんと一緒に葬儀屋さんが来れないので見よう見まねで体を拭き化粧をして寝かせてあげたらしい。
弟に礼を言おうと連絡するが無理だった。 後で判った事だが、その後、彼の近くのガスタンクに亀裂が入って、小学校に避難していたらしい。

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